写真論/絵画論
ゲルハルト・リヒター他 著
清水 穣 訳
淡交社 刊
この本の2005年増補版
旧東ドイツに生まれ、後に旧西ドイツに亡命した現代ドイツを代表する画家「ゲルハルト・リヒター」。
その画家と美術評論家やジャーナリストによるインタビュー集、そしてリヒター自身が書いたノートや日記などをまとめた一冊。
写真や光を用いる技法についてや、本人が意図していないのにイデオロギーとして読まれてしまうさまざまな対象に関して、やはり評論家たちは、論理的にリヒターから、正確な答えを引きだそうとする。しかしリヒターの考え方は、どこかそういう「部分」だけを取り出しては、説明しきれないところがある。
それでも作品はできあがり、勝手な解釈をされてゆく。
様式や「芸術を従属させるイデオロギー」をひどく嫌うリヒター。しかしどんなに様式を嫌っても、ある程度はそれを使わなければ作品にはならない。
そんな矛盾をこえ、作品を作りあげる。これは本当に、大変なことだと思う。
「様式を持たないものはなんでも好きだ。辞書、写真、自然、私。そして私の作品。(様式は暴力行為だから、私は暴力的ではない。)」
本当にそうなのか、彼の作品を観て、確かめてみよう。