ローザス・ダンス・ローザス
アートドキュメンタリーフィルム
監督:ティエリー・ドゥ・メイ
出演:ローザス(アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル他)
1997年 ベルギー
(移転前の)渋谷ユーロスペースにて
渋谷区桜丘町24-4-201 南口東武富士ビル内
この作品は、「ローザス」という女性舞踏団が、踊っているところを撮った作品。
もちろん舞台で踊っているのを、ただ撮影している…というのではない。学校のような建物(この作品のためにわざわざ建てたとか)を、隅から隅まで効果的に使い、踊るダンサーたちを無駄なくカメラは追ってゆく。
そもそもローザスのダンス自体が、見事なのだと思う。抑制されたミニマルな動きだが、それでいてダイナミック。選ばれた音楽との調和も、実に無理がない(よく考えれば、無理のある動きばかりなのに)。それをカメラがクローズアップしたりすることで、ダンサーたちのある種の色気が、映像のなかにひろがってゆく。踊りのなかで、ときどき肌があらわになるため、ではないと思う。 おそらく「映像に撮った」から、その魅力が持続して記録されるのだろう。
その結果、ダンスの抑制された動きと、映像を通しての色気と、作品に流れる物語じみたものが、見事にバランスよく拮抗した。それが良いことなのか悪いことなのかは、よくわからない。見やすくなったことは、確かだけれど。
ダンサーたちの肉体の躍動(要するにダンス)が終わり、ダンサーのひとりは、静止してから背中に握りこぶしをまわす。この作品のラストは、この握りこぶしのクローズアップ。ダンスは主役のようでいて、実は映像であることが、主役だったのかもしれない。