『さよなら、さよならハリウッド』

さよなら、さよならハリウッド

原題:Hollywood Ending
2002年アメリカ
監督/脚本:ウディ・アレン
出演:ウディ・アレン、ティア・レオーニ、ジョージ・ハミルトン、トリート・ウィリアムズ

この映画で描かれたニューヨークは、それまでになくカラフルで、光輝いている。実はこれ、「9.11」以前の作品なんだとか。確かにあのテロの後では、もう難しいかもしれない。

主人公は今ではおちぶれてしまった映画監督。不遇な生活の末に、ようやく大きなチャンスがまわってきた。彼を推薦してくれたのは元妻。その元妻に助けられながら、なんとかクランクインにまでこぎつけたのに、その前日にストレス性の失明状態となってしまったからさあ大変。

ウディ・アレン演じる映画監督は、相変わらずかなりの神経症気質で、元妻と仕事の話をしていても、途中でつい自分を捨てた(?)妻への繰言へと変ってしまう。そして妻に、「あなたは自分のことばっかり」と言われる。…妙な親近感。

大げさではあるのだけれども、世界が「現実のことから心の内面に巣食う妙なこだわりへ」と、ついついすべり落ちてしまう瞬間を、笑わせるきっかけとして描けるのはさすが。

しかしずっと精神分析を受けながら、まったく症状が改善されない人ばかり。それが、ニューヨークから外に出たくないという意思表示でもあるんだろうか。

『スコルピオンの恋まじない』の催眠術にかかるシーンに引きつづき、ウディ・アレンの「目が見えない演技」には一見の価値あり。

そして、あまりにも都合の良いハッピーエンドに、呆れつつも大笑い。

映画館にて、この映画を観ているビジネスマン風の男性たちが、大声で笑っていたのが印象的だった。

持っているテーマに比べると、あまりにもタッチが軽くて、「もうちょっとねばって欲しい」とも思うけれども、この軽みこそ、ウディ・アレンなのだろう。

よく観れば観ただけの味は出る作品。ええと、素直に言っちゃえば大好きです。

ウディは、相当にひねくれた人種が、安心して感動できるおとぎ話の名手。

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