『ウィリアム・ケントリッジ 歩きながら歴史を考える:そしてドローイングは動き始めた……』

ウィリアム・ケントリッジ 歩きながら歴史を考える:そしてドローイングは動き始めた……

国立近代美術館にて
会期:2009年9月4日(金)~10月18日(日)

この頃は、仕事でアニメ雑誌の編集部に出入りできるのですが、アニメ雑誌の誌面は、構成やデザイン、内容に冒険があってなかなか刺激的です。

編集者としてまだ未熟なせいで、就職してからは、休日もほぼ出勤状態(会社のせいではなく、自分のスケジューリングミスのためです…)。美術展にも映画にも行けず、意気消沈していたところ、アニメが取り持つ縁なのか、この「ウィリアム・ケントリッジ 歩きながら歴史を考える  そしてドローイングは動き始めた…展」にようやく足を運べました。

ウィリアム・ケントリッジは、南アフリカ・ヨハネスブルグ出身のアーティスト。一見したところラフだけど、よく見ると驚くほど見事な筆使いで描かれたドローイングのアニメーションは、シュールな話の展開で、あらゆるものを風刺します。

でもその風刺は、イデオロギーに囚われたものではなく、もっと複雑で自由なもの。これは想像にすぎませんが、複雑な歴史を持つ南アフリカでは、こういった風刺が、私たちが住む世界よりずっと身近なのでは?

古びた印象の単色手描きアニメーションは、ビジュアル的にそれだけでも美しい。でも、風刺的な内容と組み合わさることで、さらにそこに複雑な趣きが加わり、独特の時の流れで歯車がまわりはじめます。

時間を伴う動画系の作品ばかりだからこそ、もっともっと作品の前に、ゆっくり座る時間が欲しかった。これはリハビリ回なので、そのため息だけを残し、日記風に終わります。