ある愛の記録(愛と殺意)
イタリア
115分
監督: ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:マッシモ・ジロッティ,ルチア・ボゼー
アントニオーニ監督の長編デビュー作。日本初公開らしい。それにしても、いったいどこで観たんだろう?(記録しておくのを忘れました…)
冒頭から、モノクロームの画面が、こんなに美しいものかと、思わずひきこまれた。舞台となるミラノでは、冬の陽射しがまぶしいから、こんなにコントラストが鮮やかに出るのだろうか。
恋人同士が障害を越えるため、殺人を計画し、何かの拍子にそれを実行してしまうという話は、一見単純なようで、とても複雑。それだけの情熱を引きおこすものは、実は愛情なのではなく、ふたりの間に吹きはじめた秋風の予感だからなのかもしれない。
主人公の美男・美女ぶりが、ミラノの陽光のまぶしさの下で映える。しかしだからこそ、すべてが妙に危うい。探偵が探りはじめたのは、かつてふたりが、田舎へ置き去りにした誰にも言えない秘密。それをきっかけにして、何かが壊れはじめる。
ふたりの心の揺れうごきが、時には車が疾走するスピードにも乗せられ、 静かにこちらの感情をかき乱す。
結末は、予想できるようでできない。そしてその結末だからこそ、実にむなしい。
密会したり、よからぬ相談をした後、 左右にふたりが別れる瞬間、カメラが大きく後ろへひくと、まぶしい日差しの中に、普通の町の生活が映り、そのとたんこの非日常的なストーリーが、日常に溶けこんだ実にリアルなものに変る。
ところどころがゴツゴツとし、未完成な印象ながら、それだからこそ魅入られる作品。工夫がまだ見えてしまうところに、強い興味を持った。