『ミーヨン写真展 ‘EXISTENCE’』

ミーヨン写真展 ‘EXISTENCE’

美延 Mi-Yeon
ギャラリートモス
東京都中央区日本橋本町1-3-1 渡辺ビルBF

道を歩いていると、硬いコンクリートを割って顔を出している雑草ばかりに、不思議と目がいってしまうことがある。

コンストラストが強いモノクロ写真が並ぶこの写真展で、被写体はそんな雑草やアスファルトの道の地表。見慣れたものばかりのはずなのに、それは実はあり得ない光景だとやがてわかる。

会場にいらした写真家さんにお話を伺ったら、写真を1枚撮った後、そのままシャッターを切らずに2度押しすると、2枚目の写真が前のフィルムに重なって写り、こういう独特な効果が出るそう。

見慣れたはずのものが、微妙なズレによって、少し不安定なものに形を変えているからか。それとも撮られた対象自体を、じっくり眺めたことがないせいか。写真を見続けていると、ここのところあまり動かなくなっていた感情が、強く動きはじめたことに気づいた。

現実をずらしたからこそ浮かびあがる本質を、1枚ずつ丁寧に確かめていきたい写真展。見終わった後、なつかしいような、不思議なような、なんともいえない感覚にとらわれた。