SUZY HUG-LEVY 展― やさしい人体 ―

SUZY HUG-LEVY (スージ・フ=レヴィ)展
― やさしい人体 ―

会期:2001年9月3日(月)~26日(水)
INAXギャラリー(現LIXILギャラリー)にて
スージー・フ=レヴィ 展 HOME (lixil.co.jp)

展示スペースに足を踏み入れると、新聞を重ねて強くプレスし、タイヤの骨組みのようなものを押し込めた作品が目に入る。元の形状がわからなくなるほど、きつく圧縮された新聞紙のなかに、窮屈さは吸収されてしまったのか、作品のまわりには、逆に開放感があふれていた。
さらに、吊り下げられた洋服の作品がふたつ。いずれもワイヤーや針金で編まれ、実際には着ることはできない。でもその形は、中に透明人間でもいるかのごとく立体感があり、その服を着る人の雰囲気まで漂わせる。
多くの服飾作品が、それを着る人物や動きから切り離され、暗い美術館のなかで魂のないボディに着せられたとき、とたんに色あせてしまうのと違い、この服はその存在だけで、中に入っている人物の体型・動き・性格・状況・考え方などを、思わず鑑賞者に想像させる。しかもその想像は、鑑賞者それぞれによって、無数のバリエーションを持つのだろう。
展示の真ん中には、太い針金で作られた小さな人体が、いくつも吊るされていた。「止まったまま」躍動するように感じる小さな人体ひとつひとつが、風が入るたびに少しだけ揺れて、白い壁にその影が映ると、作品のスペースがぐんと広がって見える。
軽やかなのに、深い重みを持った作品の数々に触れると、なんとも自由な気分にさせられた。
作者はトルコの女流アーティスト。たとえ国や文化は違っても、同時代の感覚は共有できるものらしい。硬質な素材を使っているにもかかわらず、柔らかい曲線が生み出す美しさに魅せられ、すっきりした気分で会場を後にした。

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