これはパイプではない
ミシェル・フーコー 著
豊崎光一 訳
哲学書房 刊
月曜社サイト内哲学書房ウェブサイト
ミシェル・フーコーが、ルネ・マグリットの絵について述べた本。タイトルは、マグリットの絵画からきている。その絵とは、大きなパイプが描いてあり、下にわざわざ「これはパイプではない」と書いてあるもの。確かに一筋縄ではいかない。
読み進めるうちに、言葉がただの言葉ではなくなり、絵の方も言葉によって、絵であるということ自体を危うくされる。
パイプを形作る面や書き添えられた言葉の線も、お互いを支えたり壊したり。終いにはマグリットの絵だけではなく、自分の周りのものすべての関係が、同じようにグラグラとして、やがてなぜかすっきり。
こんな「見方」をしてしまうと、もうマグリットの絵が、普通に観られなくなる。
フーコーを正しく理解しようなどと肩ひじはらず、ただ読むぶんには、いつもの凝りかたまった考え方を、解きほぐしてくれる楽しい本だった。